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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和58年(ネ)84号 判決

控訴人 日本利器工業株式会社

右代表者代表取締役 山田敏夫

右訴訟代理人弁護士 杉原英樹

被控訴人 株式会社沢数馬商店

右代表者代表取締役 沢かづ江

右訴訟代理人弁護士 小酒井好信

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決中控訴人の損害賠償請求を棄却した部分を除き、その余の部分を取り消す。被控訴人は、「日本利器製作所」の名称を商号として使用してはならない。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は次に附加、訂正するほか原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人の主張)

一  原判決三枚目表四行目の次に『被控訴人が本件商標を被控訴人の商号として使用する場合「日本利器製作所」の「」の図形は捨象され、「日本利器製作所」という文字或いは「ニホンリキセイサクショ」という発音が被控訴人の商号として一般に認識され控訴人の商号と誤認、混同を生ずる。』を加える。

二  原判決三枚目表五行目から末行までを次のとおり改める。『3 よって、商法二〇条、不正競争防止法一条一項二号により、被控訴人に対しその商号として「日本利器製作所」の名称の使用差止めを求める。』

理由

当裁判所も原審と同様、控訴人の本訴請求は棄却すべきものと判断するが、その理由は次に附加するほか、原判決理由(昭和五八年五月一一日付更正決定を含む)説示のとおりであるからこれを引用する。

控訴人は被控訴人が本件商標を使用する場合「」の図形部分を捨象して観察すべきであり、そうすると控訴人の商号と類似性がある旨主張する。

《証拠省略》によると、被控訴人が本件商標「日本利器製作所」を使用する態様には、被控訴人の商品の表示、宣伝、広告等において、被控訴人の商号「株式会社沢数馬商店」の表示と併記して使用する場合と本件商標のみを表示する場合がある、そして後者の場合には「日本」の部分に片仮名の「タマニッポン」の振仮名をして使用されていることが認められる。右前者の場合には被控訴人の商号が同時に表示されているのであるから、被控訴人と控訴人の取引活動、商品の間に誤認、混同が生ずるおそれはないものと考えられ、また、同後者の場合でも、振仮名により、「」の図形部分と「日本」の文字部分とは外観上(視覚的)も称呼上(発音的)も結合されているのであるから、ことさら右図形部分を捨象し、残り文字部分「日本利器製作所」の内「日本利器」だけを抽出して、この文字の故に、控訴人の商号である「日本利器工業株式会社」との類似性を論ずることは適当でないし、本件商標の使用をもって被控訴人が「日本利器製作所」の名称を自己の商号として使用するものと解することはできないので、本件商標使用は控訴人との間で営業主体の混同誤認を生じさせるものでなく、控訴人の商号と類似する商号を使用するものに当らないというべきである。

よって控訴人の右主張は採用できない。

以上の次第であって、右と同旨の原判決は相当というべく、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法八九条、九五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山内茂克 裁判官 三浦伊佐雄 松村恒)

〈以下省略〉

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